木下美紗都「それからの子供」出会えたことに感謝したいアルバム

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思い出のアルバムとプロフィール

1988年生まれ 沖縄県在住 男性 会社員
木下美紗都「それからの子供」

アルバムにまつわる思い出

最近、音楽との出会いはネットであることが多く、そのせいなのか、「アルバム」という単位で音楽を聴くことは少なくなってしまいました。

アプリを使って、スマホで音楽を聴いている様子には、自分でも「音楽を消費してしまっているな」という感覚があります。

昔に音楽と向き合っていたやり方。カセットテープやCDに入っている、連なりとなった音楽群と向き合うやり方が、とても懐かしくなります。そういうことにふと気づいた瞬間には、思いもよらず深い哀愁を感じます。

そんな私も、たまにアルバムを買います。それはとても稀な行動です。だからこそ、その行動は説明のつかないほどに強い衝動によるものだと言えます。

私が強い衝動に駆られて手にしたアルバムのひとつ。それが、木下美紗都さんの「それからの子供」です。

このアルバムでは、楽器と電子音と言葉が寄り添いあうように共存しています。

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1曲目に入っているのは「彼方からの手紙」です。木琴のように優しい音色をした電子音が、深い森の中で反響するようにして鳴り、歌の入り口まで聴き手を導いてくれます。

自然を感じさせる空気がそこにはあって、それでいてやはり人口的でもあり、人肌をした何かを感じさせます。本当に温かいという気持ちになります。

冒頭の段階で、恍惚はピークに向けて膨らみを見せます。あまりにも魅力的に展開するものだから、聴き手である私は半ば呆然とするのですが、歌い始めがまた魅力的。

夜の気流にのせて 誰か夢を飛ばすから
僕のマシンをそっと 狂わせる 狂わせる

こんなに詩的で、きれいな語感をした歌詞を、私はほかに知りません。

最初に聞いたとき、背筋がゾクッとしました。このごろは音楽に対して淡泊な態度を取っていたので、自分自身の音楽的感性が突然目覚めたことには、ある種の怖さを感じるくらいでした。

詩的な表現は、アルバム全体を優しくくるんでいます。そしてその表現と一緒になった楽器がそこにあります。

特に、8曲目の「とんだボール」が圧巻です。矢継ぎ早に繰り出される詩の後ろで、ドラムが激しく美しく鳴り、古典的なシンセサイザーの音色が印象的に響きます。

それはただの演奏ではなく、本当に詩的・文学的と言える印象深い音の連続で、音楽的な素養のない私でさえも、演奏者たちの音に対する敬虔な態度に気づかざるを得ません。

出会えて良かったと思える音楽との出会いは、限られたものだと思います。そうであるなら、出会えて良かったと思える「アルバム」との出会いは、さらに限られた幸福なものと言える気がします。

このアルバムはそんな出会いでした。出会えて良かったです。

 

それからの子供

1,200円
(2015.11.15時点)
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