カーステレオから流れる最後の「いとしのエリー」

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思い出の1曲とプロフィール

1955年生まれ 福岡県在住 女性 主婦
サザンオールスターズ「いとしのエリー」

曲にまつわる思い出

その日は、朝から抜けるような青空が広がり、久しぶりに彼とのデートのため、前日から献立を考えておいたお弁当作りに、悪戦苦闘して2時間もかかったことが、今でも鮮明に頭の中に残っている。

待ち合わせの時間に少し遅れて行った私は、いつも遅れてくる彼が、珍しく私より早く来ていたことが、少し気になっていた。しかしその不安も、久しぶりに彼の顔を見とたん、うれしさでどこかに吹き飛んでしまった。

「どこに行こうか?」

「海なんてどお?」

「えー、寒くて行きたくないな。」

「この季節外れに行くのが、オシャレなんじゃない。」

などと、いくぶんハイテンション気味な私の強引さに負けて、湘南のとある海岸に行くことにした。

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credit: SFB579 🙂 via FindCC

2時間ほども走っただろうか。季節外れの海は、寒さが白い波をなおさら白く見せているようだった。私たち二人は、寒さも忘れ波と戯れたり、砂でトンネルを掘ったりした。

彼は波と追っかけっこをして、ズボンのすそを濡らし、「あー、冷てえ。風邪ひいちゃうよ。」と言って、泣きそうな子供のような顔で、私に言った。

彼のこんな子供じみたところが、私はたまらなく好きだった。そして、寄せては返す波のように、この幸せなひと時が、これからもずっとずっと続いていくものだと、信じて疑わなかった。

帰りの車の中、冗談で人を笑わせるのが得意な彼の話に、私はお腹を抱えて笑い転げていた。カーステレオからは、私の大好きなサザン・オールスターズの「いとしのエリー」が流れていた。

「実は俺、この間見合いをした相手と、結婚することになったんだ。」

突然の彼の言葉に、私は耳を疑った。DVDレコーダーの一時停止ボタンを押したみたいに、人も車もみんな止まっているような光景が、ふと頭に浮かんだ。あんな感覚は、今までに経験したことがないものだった。

そして、その止まったように感じられた時間は、容赦なく私の中を通り過ぎて行った。あれから、どれぐらいの時間がたったのだろう。

私は今、聞くことが出来ないでいた「いとしのエリー」を懐かしく、そして愛おしさでいっぱいの思いで聞きながら、彼は幸せになっているのだろうか、そして「いとしのエリー」を聞くこともあるのだろうか、とふと考えている。

 

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